映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』実話・あらすじをわかりやすく解説!71年米ニクソン政権VS報道の自由をめぐる攻防だけじゃない、監督が伝えたかったもの。

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映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(3月30日より日本上陸)では、1971年ニクソン政権下の米政府を舞台に、ベトナム戦争に関する詳細な軍事行動に関する機密文書の流出事件と、それらの真実を報道した新聞2社の協同・連携を実話に基き描いた社会派作品。今回は、映画を観る前に、知っておきたい!映画作品のあらすじから、当時、「米国で何が起こっていたのか」という実話を時代背景とともに、わかりやすく解説していきます。<政府VSメディアの権力・報道の自由>だけじゃない!スピルバーグ監督が本当に伝えたかったものとは?

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(原題『The Post』)あらすじ・内容・ストーリー

1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内には反戦の気運が高まっていた。国防総省はベトナム戦争について客観的に調査・分析する文書を作成していたが、戦争の長期化により、それは7000枚に及ぶ膨大な量に膨れあがっていた。
ある日、その文書が流出し、ニューヨーク・タイムズが内容の一部をスクープした。
ライバル紙のニューヨーク・タイムズに先を越され、ワシントン・ポストのトップでアメリカ主要新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、残りの文書を独自に入手し、全貌を公表しようと奔走する。真実を伝えたいという気持ちが彼らを駆り立てていた。
しかし、ニクソン大統領があらゆる手段で記事を差し止めようとするのは明らかだった。政府を敵に回してまで、本当に記事にするのか…報道の自由、信念を懸けた“決断”の時は近づいていた。(引用元:公式サイト)

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(原題『The Post』)実話をわかりやすく解説

◆ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書とは?

最近、「パラダイス文書」という租税回避に関する顧客情報が暴露・流出する事件が起きたばかり。パナマ文書の第2弾と言える暴露事件、日本でも鳥山明氏がアメリカに設立された不動産リースの投資事業組合に出資していたという事実が発覚し、一時話題となった。「ペンタゴン・ペーパーズ」もまた、機密情報であることに違いはない。

言葉から理解するならば、「ペンタゴン」とは五角形を意味する言葉だが、ここでは、米国防総省のことを指す。米バージニア州アーリントンにある同省の建物が五角形であることから、「ペンタゴン・ペーパーズ」と名付けられる。

◆ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書には、何が記されていたのか?

1967年に当時の国防長官ロバート・マクナマラ、ベトナム戦争拡大に一役買った彼は、戦争に疑問を持ち始め、史実の分析記録を残そうとベトナム戦争の経過を詳細に調査・分析した「ペンタゴン・ペーパーズ」製作を指示。

文書は、一見、無害そうなタイトルにも関わらず、トルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソンの4政権にわたって隠蔽されてきたベトナム戦争に関する膨大な事実が、約7000ページにわたり記されていた。

そこに記されていた内容とは、アメリカの軍事行動について何度も国民に虚偽の報告をし、政府が平和的解決を追求していると発表されていた時でさえ、軍とCIAは極秘に軍事行動を拡大していたこと。さらに、暗殺、ジュネーブ条約の違反、不正選挙、アメリカ連邦議会に対する嘘など、アメリカ政府の闇の歴史が綴られていた。

ベトナム戦争とは
ベトナム戦争は、インドシナ戦争後に南北に分裂したベトナムで発生した戦争の総称。第二次インドシナ戦争ともいわれた。ベトナム社会主義共和国では米国戦争、対米抗戦、抗米救国戦争などと呼ばれる。(引用元:ウィキペディア)

アメリカは1975年にベトナム戦争から撤退したが、最終的に58,220人のアメリカ兵が死亡し、100万人以上の命が犠牲に。勝ち目のない戦いと知りつつ東南アジアを戦火に巻き込み、人民を虐殺し、米国の多くの若者を戦死させた泥沼のベトナム戦争の真実は、政府にとって明かしてはならない最高機密情報であったのだ。

◆ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書は何者によって流出したのか?

ニューヨーク・タイムズにペンタゴン・ペーパーズに関する情報を提供したの内部告発者は、政府出資のシンクタンク「ランド研究所」の優秀な軍事アナリスト—のちに内部告発者となった—ダニエル・エルズバーグ。


ペンタゴン・ペーパーズを内部告発したダニエル・エルズバーグ(左)。妻パトリシアとともに=米カリフォルニア州バークリー(出典元:内部告発者自身が語るジャーナリズムの危機~『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

1971年3月、エルズバーグは、自らも執筆に加わった約7000ページにわたる文書を少しずつ持ち出し、コピーしていく。当初は、国家安全保障問題担当の大統領補佐官キッシンジャーや、上院外交委員長フルブライト議員ら要人を動かそうとしたが叶わず、もともと知人である当時34歳のニューヨーク・タイムズ紙(NYT)記者ニール・シーハンに持ち込む。

NYTは法律顧問の反対を押し切り、約3カ月の精査を経て第一報を報じた。当時のニクソン政権は激怒、「国家の安全保障を脅かす」との理由で公表中止を求め、連邦裁は掲載中止の仮処分命令を出すも、時すでに遅し。ワシントン・ポスト紙も文書を入手し報道すると、各地方紙もそれに乗り出し、事実は国民に知れ渡り、ベトナム反戦運動が盛り上がった。

◆原題『The Post』が示す意味、なぜ監督はワシントン・ポストに焦点を当てたのか?

原題『The Post』とは、ワシントン・ポスト紙のこと。今の人たちからすれば、アメリカを代表するあのワシントン・ポストね。平たく知られた存在だが、NYTだけが、正式名で”ザ・タイムズと形容されるのに対し、当時はまだ無名の地方紙扱いだったワシントン・ポスト。さらに、社主家のキャサリン・グラハムが、自殺した夫を継ぐ形で主婦から突如として同紙発行人となり、「経験のない女性経営者」として周囲から冷ややかな目を当てられ、その立場は軽んじられていたという背景があった。報じればNYT同様に掲載中止の命令が出される恐れから、株式公開を控えて法律顧問らは猛反対するだろう。2重の葛藤を抱え、グラハムが、その人生、社をかけ、選んだ決断とは?(決断のクライマックスシーンは、テンポよく描かれ、最上の盛り上がりを見せます。)

映画ジャーナリストの齋藤博昭氏は、「揺さぶりのエンターテイメント」とグラハムの葛藤〜決断に至るクライマックス・ラストを表現。さらに、映画ライターの清藤秀人氏はまた、「女性差別を浮き彫りにした作品。女性は時に臆病とみられるが、真実を見てきた。20世紀の出来事とはいえ、今に通じる社会派作品」と。さらに、映画評論家の立田敦子氏は、本作を「現在の世界のケーススタディ」だと評価。<政府VSメディアの権力・報道の自由>といった、これまでのジャーナリズム作品とは異なり<女性蔑視・差別>への警鐘を鳴らし、今に伝えるべき映画なのです。見方は違えど、スピルバーグ監督が、NYTではなく、ワシントン・ポストに焦点を当てた理由、タイトル『The Post』に込めた意味はここにあるのでしょう。

おわりに

ニクソン大統領を失脚にまで到らしめた「ウォーターゲート事件」を描いた作品『大統領の陰謀』(1976年)は、彼女の決断がなければ描かれることがなかったかもしれない。まさに本作は、「ウォーターゲート事件」の布石とは、言わずもがな。本作では、ラストシーンでそれが描かれている。

本作の現代となる映画『ザ・ポスト(The Post)』は、アカデミー賞の前哨戦とも言われるゴールデングローブ賞の6部門(監督賞、主演女優賞、主演男優賞、脚本賞、音楽賞、作曲賞)にノミネートされ、すでにアカデミー受賞作品の候補作へ名を挙げます。それもそのはず。なんせ、名匠スティーヴン・スピルバーグ監督と、ハリウッドの名優トム・ハンクス5度目のタッグ作。しかし、多くの映画評論家は、主役はメリル・ストリープと位置づけています。スピルバーグ監督は、今の時代に”真実の報道””報道の自由”とともに、”女性の自由”すらも、本作にメッセージとして込めているのでは?

さらに、10ヶ月という短期間での撮影。この製作スピードは、異例中の異例。裏には、ドナルド・トランプ大統領就任の45日後に製作が発表されたことも、関係しているのではないかと言われ、製作期間に反比例し、スピルバーグ監督が作品に込めたメッセージのつよさが伺える作品に仕上がっています。ぜひ劇場で。

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